おばさんが窓のところからわれわれに陽気な声をかけた。
「野営地を見にきたんですか? あんたがたは――」
「そうです」
とわたしは答えた。
「どこへ行ったらいいんでしょう」
「まっすぐその道行って、第一番の家へ入っておききなさい」
「ありがとう」
家と松の木のかげを出たら、前にとってもカラリとした広場があらわれた。真中に高い高い柱が立っていて頂上に大きい赤旗が翻っている。夏の光った熱い青空で、赤旗は愉快に翻っている。
朝、野営地じゅうのピオニェールが整列してラッパと敬礼でこの旗をあげる。夕方、また同じ儀式でこの赤旗をおろす。赤い労働者の旗は、ピオニェールの一日の働きのしるしなのだ。
一番目の家というのは、すぐ広場の前にある。十二三の、ピオニェールの制服をつけたオカッパのピオニェールの女の子が二人、家の入口のところに歩哨に立っている。その家の中には、この野営にやって来ているいくつかの分隊の分隊旗、ラッパ、太鼓などが、きちんと並べて飾ってある。
そのピオニェール少女のひとりが、指導者をよんで来てくれた。まるで若い共産党青年女子《コムソモールカ》だ。上は制服をきているが足はむき出しで、
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