かって、わたしは、或る野営地見学に出かけていった。小さい田舎のステーションで汽車を下りて、林の間の道をドンドン歩いて行くと、沢山の牛が小さい牧童と犬とに番されながらやって来る。
 なお行くと、林から伐《き》って来た樹を、そのまんま門にして、緑の葉っぱで飾った凱旋門みたいなものが行手に見えた。
 見ろ! 鎌と槌の飾がついてる! 赤旗がヒラヒラしてる。ピオニェール野営地の入口だ。
 嬉しい心持ちで、あっちこっち見まわしながらそこをぬけると、大きい松の木の下に家があって、裏で、赤い襟飾をつけたピオニェール少年少女が数人笑ったり喋ったりしながらジャガイモの皮むきをやっている。太ったおばさんが、前掛で手をふきながら、窓のところへ立っている。そこには涼しい風がふいた。
 みんなも知っているだろう。ピオニェールは小さくたって、大人の働きをたすけることをよく知っている連中だ。大勢で野営地にくらすとき、順ぐり当番で、ピオニェールたちが食べものこしらえの手伝いも、洗濯も、掃除もみんなやるんだ。自分の室や服や、食うものやを不潔にしといて、争議んときだけ働くピオニェールというものはないんだ。
 ところで、その
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