よりは勿論よろしゅうございます。働かない人間より、働く人間、見識のない人間よりある人間。
先生は、ハドソン川から紐育《ニューヨーク》へ入る途中の――島に炬火を捧げて虚空に立って居る自由の女神像を御存じでございます。
又、コロンビアの大図書館の石階を登りつめた中央に、端然と坐して、数千の学徒を観下す、Alma Mater をも御存じでございます。
彼女等は皆此の広大なアメリカの精神の中枢となって生きて居ります。
こちらの「女性」と云う概念は単に「女王」としてのみならず、又神とまで尊敬されます。
けれども、気をつけて御覧遊ばせ。
此等の女性最高のシンボルである彫像は、一体何で出来て居りますか、そしてどんな色彩をほどこされて居りますか?
彼女等は決して、一槌の鎚でみじんになる大理石では作られて居りません。
時間と云うものに、極力抵抗した硬金属で作られて居ります。
そして、その上には、更に、燦い黄金をもって包まれて居るのでございます。
先生
ルネッサンス式の壮大な、単純と優雅とを調和させた大建築の前面に、厳然と立つアルマ・マターは、何と云うよき場所に置かれたのでございまし
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