けれども、斯様に、種々の差別を以て生活して居る幾千万かの婦人を透して、持って居る何物かもございます。
 其をあげて見るならば、第一は、積極的な事でございましょう。こちらの婦人と、我が故国の婦人との差は、恐らく、只此の積極と云う一字の差であるのではございますまいか。
 私共の親達は、彼女の少女時代をどうして育ったでございましょう。その処女時代を、その新妻として記憶すべき時代は、彼女の脳裡にどんな美くしく喜ぶべき思い出となって居りますでしょうか。
 私は、自分の母のために、総ての左様である女性の為に、真個に彼女等の受けて来た待遇をお気の毒に思わずには居られません。
 笑いたい丈笑わせられる若い娘が幾人ございましょう。勉強したい丈させられる人、愛したい丈真に愛せる人。其等の人は、我国の女性のうちに幾人あるでございましょう。従来の形式的教育は、総ての外囲だけを強制的に調わせようと致しました。
 そして、その整ったと云う理想の形は、只無暗に人の心の裏を悟るに早く、自己をフランクに表わす事なく、凝と総てを両歯の間にかみしめて、眉を上げたような女でございます。
 女性の持つべき総ての特性を完全に育て
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