時には、うんざりさせてしまうような調子の高い陽気さも彼女の裡にはしっくりと融和されて、女性の強靭な弾力を輝やかせる一色彩となりますでしょう。
彼女こそは愛すべき永遠の女性として、地上の歓びを生むべきなのでございます。
けれども、C先生、勿論此は、現存して居る人の一つの型をより強調し、より理想化した私の偶像にすぎないのでございます。
こういう方向に向って行って居る人は居ります、勿論。けれども、彼女等の周囲を囲繞して居る種々な条件はなかなか、人類の希望する「そのところ」へは行かせません。
私共の前進に大きな困難があると同様に彼女等も又、多大な努力を要すべき種々な障害を控えて居ります。保守的な彼女等の先輩は、只管に聖句を愛用して、誤解した神聖さで、人間を殺そうと致します。
薔薇液を身に浴び、華奢な寛衣《ネグリジェー》をまとい、寝起きの珈琲を啜りながら、跪拝するバガボンドに流眄をする女は、決して、その情調を一個の芸術家として味って居るのではございません。
こちらの婦人の華美と、果を知らぬ奢沢は、美そのものに憧れるのではなくて、一顆の尊い宝石に代る金を暗示するから厭でございます。
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