、落付いた分別を失わせるために、何がどうなのか正体もわからなくてただセンセーションばかりおこす事件が、次々となげ出されています。下山事件。三鷹事件。そのどれもが窮乏に耐えがたくなっているわたしたち人民の心に何かの気味わるさを感じさせ、抵抗している感情に疑惑を抱かせる政治的効果をねらって成功しています。世界平和大会が「世論を毒する宣伝を無力なものにするために、真理と理性の防衛のために広汎な戦線をうちたてる」ことが必要であることを、宣言しているのは実に実際的だと思います。
 とくに、日本の平和のために適切です。捏造記事である大本営発表に追い立てられてきょうの破滅が来たことを、日本のすべての人々は知らされました。特権階級として権力を握っているものは、どんなだいそれたことまで平気でしでかすか、ということについて知らされました。こんにち同じ本質の挑発的事件や記事が、主題をかえて、言葉をかえて、あらわれはじめました。誰が、どこでこね上げる計画なのかわからないが、山とつまれている未解決の社会問題を燃《た》きつけにして怪火を出して、一般の人々が判断を迷わされているすきに、だから武装警察力を増大しなけれ
前へ 次へ
全5ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング