をつくってゆくだろう。
 現実を知るということ、または大人になったということを、このものわかりよさに屈伏した内容でいうひとの多いことを、私たちはまじめにとりあげなければならないと思う。
[#ここから2字下げ]
             *
みんな
ふり出しでは、清浄であった
一生懸命であった

みんな中休みでは、まだ
人生の希望をすてなかった

みんなふり出しでは、健康であった
心も、正しかった

みんな、中休みではまだ
自分のコースを話し合って
[#ここから14字下げ]
(「人生のダイス」竹内てるよ)
[#ここで字下げ終わり]

 けれども、自分のダイスがコースをはなれてゆくにつれて、ものわかりよさに敗北してそれに導かれた日常に身をおくと、かつて自分も清浄なふり出しをもったことをせめてものよろこびとする人たちより、それは若かったから、と自嘲して見る人の方が多い。そして、今なお、一生懸命にふり出した時の希望をすてず、悪戦し苦闘している女の仲間を、憫然らしく流し目にみる。ものわかりのわるい人たちとしてみる。
 若さを喪失することにある悪は、フランスの貴族的な女詩人マダム・ノアイユが詠歎し
前へ 次へ
全13ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング