ものわかりよさ
宮本百合子
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昔から女にもとめられている日常の美徳の一つに、ものわかりのよさ、ということがある。
とかく女が狭い生活にとじこめられていたために、人生の視野がせばまって、我執だの偏執だのが女につきものの気質のように見られた一方の、その対蹠的な要求とでもいうべきものだったのかもしれない。やきもちをやかないこと、そして物わかりのよいこと。その二つが身に備わっているとなれば、賢い女のうちに入れることはまぎれもなかった。
女にものわかりのよさをもとめられたのは、昔だけのことだろうか。男の世界によい意味でも目の上の瘤にならないように、わるい意味でも邪魔っけにならないように、女のものわかりよさが求められたのは、昔ばかりのことだろうか。
ぐるりと生活を見わたすと、今日でもやはり、女に向かってこの同じものわかりよさが何かにつけもち出されていると思う。君はわからない女だ、という言葉の内容は、君はわからない男だというと同じ内容ではいわれていないのが実
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