は、ある年齢になれば大抵自分で働いて経済上にも自立したい心持をもっている。生活にさし迫っていなくても職業はもちたいと思っている人が大部分であろう。社会の需要もこの頃は女の力を非常に必要としているから、女の働き場所は、ともかく割合にある。だけれども、その働きは、女がより豊富な人間として成長したい心持から求める社会的な勤労の姿では現れず、経済的の点からも自立は不可能なくらいしか報われない。日本では昔からのしきたりがこういうところへ作用していて、若い女は親の娘、良人の妻と考える方便が、近代の経営術のうちに巧にないこまれているから、働く方では一人前、しかし報酬は内職標準という割合がめやすとなっている。働かせはするが、仕事の本流で女は除外されているから、向上の前途も見とおし少い。
それに加えて、今日でもまだ男のひとたちが、相当の生活力をもつ女には男にその二つが是非ほしいように、やっぱり家庭と仕事とがいるのだという自然なねがいを、自然なこととして納得できずにいるというのは女にとって何と困ったことだろう。
男のひとたちは、世帯じみた女を好まない心をもっている。モウパッサンの「女の一生」を女の悲惨
前へ
次へ
全13ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング