く感ぜられました。当時三十歳を越していた彼女は、自分の境遇に同情し、所謂《いわゆる》世話好き人の媒妁によって、土地では金持として知られている或る男と結婚することになりました。
 少女時代から不運で、陰気な人生の片側を歩いて来た彼女は、全く、生涯をかけて、嫁して行ったのだそうです。
 けれども、結果は悪く、三年同棲する間に、女性がその良人に対して持ち得る極限の侮蔑と、恥と憤とを味って離婚してしまいました。
 生活の安全、幸福と云うものは、只、金でだけ保障されると思って媒妁人は、心から彼女の為を計って、却って、富の程度に比例した非人間に、彼女を紹介する誤を犯して仕舞ったのです。
 過般、私が遭った時、彼女は、噂に聞いて陰ながら悦んでいた二度目の幸福な結婚から、不意に良人を奪われて間もないと云う気の毒な状態にいました。
 切角人格的に尊敬し得る異性に出会い、まことに愛されもし、漸々遅蒔きながら人生が実りかけようとすると、今度は予想外の死で、万事は、動揺と不安とへの逆転になってしまいました。
 彼女にとっては継子である嗣子夫妻との間に理解を欠き、亡夫の一周年でも過ぎたら、どうにかして、彼等は全
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