までも思いめぐらして見た。
 どんづまりにつきあたるところはやっぱりさっきと同じおそろしく物凄いそうして動かすことの出来ない悲しいいたましい事であった。
 男は又あともどりをした。
 そうして出なおした。
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「うんと遊びぬいて――」
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 そのつきあたりも同様であった。
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「うんとなまけて――」
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「死」がわらって居る、
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「そこいら中ほっつきあるいて――」
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 動かし得ないものにつきあたった。
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「どうすりゃあいいんだ!」
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 信仰もなく自信もなく抱ふなどの有ろうはずもない男は通りこしてしまう事の出来ない関所の前につきあたるとあとじさりをも又つきやぶる事も出来ないでただなす事と云えば動かない「死」を声のかれるまでののしってそのあげくは普通より以上にものすごくむごく死の手にとりあつかわれなければならない運命をもって居た。
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「フん、はばかんながら己様が今死んでなるもんかい。
 女房もな
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