どんづまり
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)等《なんか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)朋輩|等《なんか》への

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(例)[#ここから1字下げ]
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 荒漠たる原野――殊に白雪におおわれて無声の呪われた様な高原に次第次第に迫って来る夜はまことに恐ろしいほど厳然とした態度をもって居る。
 灰色と白色との合するところに細く立木が並んで居るほか植物は影さえもなく町に通わなければ「生」を保って行かれない弱い力の人間どもがふみつけた道が世の中を思わせる様に曲りくねり細く太くずーっと見通せるもより遠くまでつづいて居る。
 やせがまんをしながら博奕にまけて文なしになった独りものの男は笑いながらたどった。
 パクパクになった靴にしみ通る雪水の冷たさを感じながらも男は笑いながら云った。
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「ナ、今日は基本がねえからまけたんだ。あした一っぱたらきすりゃあ又ひかったやつが己れさまの懐ん中へチャリーンと笑いながら舞いこむだ」
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 つぶやきながら
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