状は明かでない。」
 栗林弁護人も竹内被告の起訴状について共謀、謀議などの言葉の意味についてたずねる。
 裁判長「今わかりませんか。共謀の日時、場所は。」
 勝田検事「七月十日から十五日ごろまで。三鷹電車区構内の整備第二詰所としようとしている古電車や、労働組合の事務所又はその附近、それから高相方などにおいて、よりより数回にわたって謀議が行われておりました。」(被告席失笑)
 裁判長「飯田被告と他人と共謀の上とあるが、起訴当時ははっきりしていなかったかどうか。」
 勝田検事「八月一日に第一次に起訴した七名を検挙しておりましたので、この共犯関係は分っておりました。」
 裁判長「八月八日の起訴の時には、大体分っていたというのですね。」
 勝田検事「検挙しておりましたから共犯だと思って起訴しました。」
 林弁護人は共謀の事実、場所、人物について説明を求めた。それに対する勝田検事の答につづけて、
 裁判長「今の点、もう少し具体的になりませんか。」
 勝田検事「かような計画は、全体の雰囲気からでてきたものであります。被告人が一堂に会してやったんじゃありません。(被告席身体をゆすって笑い出す)(以下
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