それに偽りがないならば
――憲法の規定により国民の名において裁判する――鈴木裁判長
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)杙《くい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)特別[#「特別」に傍点]な考慮のための
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 去る十一月一日発行の『文学新聞』に評論家の佐藤静夫氏が三鷹事件の被告宮原直行さんの令兄にインタービューしたときのルポルタージュがのせられていた。商業新聞のやりかたにいためられてはじめは会うのも話をするのもいやがっていた令兄子之吉氏は、やがて『文学新聞』というもののたちがわかって、ぼつぼつ話しはじめたと書かれている。その話の中に次の言葉があった。八月八日に「はじめて面会を許されて弟に会いましたが、そのとき立ち会った木村検事にわたしが、公正な立場でやっていただきたいというと『宮原係の検事としてききずてならない』と酒を飲んだように顔面を紅潮させて、両脇腹に手をあてがって『でっちあげるのはわけはないのだ』といいはなちました。そのあとで、しかし今は昔通りにはゆかないけれど、と云っていました」
 わたしの目は、いくたび
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