るのである」(吉田三市郎弁護人、速記録による)。稲本錠之助弁護人は、フランス大革命当時の哲学者ジョセフ・ジューベールの言葉をひいて弁論した。「一体この事件がランプの光の前で検討されたものならばまだしも、今朝来被告人等の言うことをきいておりますと、ランプの光にも行かない。螢の光ぐらい。私は必ずしも真黒だ、まっくらやみの中だということは申しませんが、何にいたせ、明るい光の下において検討された事件でないということを、今朝来、被告人等の片言隻語の中から受取ったのであります」(速記録による)そして大岡越前守が「あの封建時代、みずから捕え、みずから取調べるというもっての外の裁判制度の時代ですら、今日三尺の児童も大岡裁き、大岡裁判といえば存ぜないものがないくらいの名をのこされた」(速記録による)その誠意、見識をもって本件をあつかってほしいと要望している。正木昊弁護人は同日「私は共産党には反対であるが、それよりも白いものを黒いとすることにはいっそう反対である。白いものを権力をもって黒いとすることは人道に反することである。(中略)権力を用いて白を黒にするなどということは全世界の人類を侮べつするものである
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