検察当局が事実正義を愛する者の味方であるならば、この陰謀の一つであるこの公訴を即刻とり消すべきである。」と。
 偽証罪で公訴されている石川政信(二七)元鉄道技術研究所員と金忠権(三一)元『三多摩民報』記者らはこう陳述している。「私は一ツ云いたいことがあります。それは、検事の理解に一致しないすべての証言は、偽証であって、偽瞞であるとこのような独断的、専断的言辞に対して私は心からの憤まんをもっています。」(被告石川)つづいて金被告ものべた。「偽証罪に対する起訴取消を行っていただきたい。」「検事がこのようにすべてのものをいう者に対して全部が起訴ということにしてこういう風にひっぱられるなら、日本の全人民は一言もしゃべることができない。」「検事は何といっているか、君があまりはっきりするから悪い。もう少しぼやかしたらどうかということは、一体正直なことをいえというのか、それとも嘘をいえというのか、これをはっきりして頂きたい。」
 この点に連関して、午後の法廷で林弁護人の行った弁論の中に、特別注目をひく箇所があった。「さる十月二十七日に石川検事が東京地検の三階の会議室で、検察事務官に対する刑事訴訟法の
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