ているというのは、理性の方法をもって愛のためにたたかった※[#「火へん+華」、第3水準1−87−62]子さんの精神が、悲しみで朽ちさせられていないからこその真情だと思う。そして、戦争にふるい立てられていた当時の「あのすさまじい皆の心、それと同じものが世界平和のために湧き上らぬものかしら」という言葉は、※[#「火へん+華」、第3水準1−87−62]子さんににじりよって、その手をとらせたい心にさせる。そうなのよ、※[#「火へん+華」、第3水準1−87−62]子さん。わたしは、どんなに、※[#「火へん+華」、第3水準1−87−62]子さんから、真実なそのひとことをおききしたいと願っていただろう。そのひとことが、全日本の女性の胸の底にこだまとなってひびくことを願うだろう。
 日本には百八十八万人の未亡人がいる。その一人一人が母ではないかもしれないけれども、妻としての人生に傷をうけなかったひとは一人もいまい。世界の善意はこんなに平和のために動いていて、日本のなかにも痛切に平和を求める人々の動きがおこっている。日本の女性こそ、戦争を拒絶し、平和をまもるために働かずにはいられない立場の人々だと思う。
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