れたりした。
其の晩、お久美さんは今まで有った事の無い幼児の様に安らかな明けの日の楽しい眠りに陥ちた。
九時過の汽車に山田夫婦を送り出してから、お久美さんは、珍らしく※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子を訪ねた。
その前の日に漸う床を離れた許りで、まだ頭の奥が重い様な気持で、何事も手に就かないで居た※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は意外なお久美さんの声に驚きもし喜びもして、年に似合わしい浴衣を軽く着て、髪等もまとまりよく結ったふだんとはまるで人の違う様な姿を楽しそうな眼差しでながめやった。
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「今日はどうしたの、
どうして此那に早く来られたの。
「今日?
まあね、そりゃあ好い事が有るのよ。
伯母さん達がY市へ行って留守になったの。
「そう、まあ、そいで、
いつ立ったの、昨日。
「いいえ、今もう一寸さっきなの。
私ね、町の辻さんの所へ行かなきゃあならないんだけれ共、行きがけに一寸およりしたの。
思い掛けない事が有るわねえ。
「ほんとにねえ
いつ頃帰るの。いずれあすこまで行ったんだから四五日か一週間位は掛るん
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