お久美さんと其の周囲
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)五月蠅《うるさ》い
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)好い位|自惚《うぬぼ》れて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]
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一
月に一二度は欠かさず寄こすお久美さんの手紙は、いつもいつも辛そうな悲しい事許り知らせて来るので※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は今度K村へ行ったら早速会って話もよく聞いて見なければと思って来は来たのだけれ共、其の人の世話になって居る家の主婦のお関を想うと行く足も渋って、待たれて居るのを知りながら一日一日と訪ねるのを延ばして居た。
書斎にしてある一番奥の広い部屋の廊下に立って見ると、瑞々しい稲田や玉蜀黍等の畑地を越えた向うに杉の群木にかこまれたお久美さんの居る家が静かに望まれた。
茶色っぽい蔵部屋の一部が、周囲の木の色とつり合って、七月始めの育ち
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