んに一から十まで面倒見てもらってるんだから決して我を張る様な事が有っちゃあならないのさ。
ね、まあ訳を話しておくれな、お関さん。
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お関は自分でも何がほんとに叱る事なのかはっきりは分らなかったけれ共、口の中でゴトゴト何か云ったあとで、
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「皆私が及ばないからなんですよ。
こんな小娘にまで踏みつけられるかと思うと、
この年をして生きて居る甲斐がなくなりますよ。
ほんとに。
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と泣き出した。
来た者は皆お関の気心を知って居るので、お関を叱る様なお久美さんを叱る様な至極要領を得ない事をくどくどと繰返して到々仲なおりをさせてしまった。
その騒ぎの最中二階では浮腰になって居る清川をまあまあと云って山田の主人が独りで機嫌よく酔って居た。
十
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は翌日其の事を人伝に聞いた。
其の場の様子等を種々想像しながらお久美さんの身に恙がなかった事を喜んだけれ共、自分が風邪を引いて床に居たので会う事も出来ずに四五日を送った。
村の者は、口先でこそ会えば
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