「もう此那家に居ないが好いよ。
どこでもお前のすきな所へ行くが好いじゃあないかい。
お前の大切なお※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんの所もあるしね。
私はもうそうやってふてて口も利かない様な人と一緒には居られないんだからね。
恐ろしくて。
「今時の若い者なんて、何が何だか分りゃあしない。
ね、お久美、
お前云わないで好いのかえ。
後で後悔おしでないよ。
ほんとに図々しいにも程が有る。
どうしても出て行ってもらった方がいいよ。
[#ここで字下げ終わり]
逃げて帰った娘達の話に驚いた者達は相談ずくで七八人集まって山田の家へ来て、お久美が一人ぽつねんと叱られて居るのに少なからず驚かされた。
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「何ーんの事だ。
[#ここで字下げ終わり]
と云う気が仕たけれ共、する事もないので来た者は二人の仲裁に入った。
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「何かお久美ちゃんに落度が有ったら、俺がだまっては居ないさ。
ね、お関さん、どうしたんだ一体。
明けっぱなしに云ってお呉れな。
叱る所はみっちり私が叱ってやるから。
お久美ちゃんも何だ。
お関さ
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