関は「白状しろ、白状しろ。え、何をして居たんだよ」とお久美さんを攻めたてた。
お関の不法な怒りに会って只泣きながら震えて居たお久美さんはあまり幾度も幾度も攻めつけられるので、
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「私、私何にも知らないのに……
あんまりだわ。
恭に聞いて御覧なさると好いわ。
何ぼ何だって、私まさか。
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と云うと、お関は益々声を荒々しくして、
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「何があんまりだえ。
よく口答えをおしだね。
さ、何とでもお云い。
ききますよ。
人が不憫だと思って何でも手をひかえて居ると、増長して何でも勝手にする気になって居る。
もう今夜と云う今夜はきかないよ。
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と云いたてた。
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「一体さっきだってお前が気さえ利いて居ればすぐ皆を好い様に云ってなだめるべきだのに、あんなに成るまで黙って見て居て、いざとなると、自分だけさっさと何処へか行って仕舞って……
お前みたいな恩知らずはないよ。
私みたいな者が何故撲り殺されなかったろうと口惜しかろうね。
だが、そう上手くは行かないのが世の中なのさ。
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