てその気持が分って、少し狼狽しながら、
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「彼の人達が斯んなにして行ったのよ。
私今来たばっかりで何にもしない。
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と低い声で云ったけれ共お関は益々いら立って、
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「さ、恭、
お前あっちへお出で、此処はいいから。
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と命じてから、
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「お久美、まあお座り。
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とお久美さんを自分の前へ引き据えた。
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「お前は此処で何をして居たんだい、え、お久美、
お云い。
すっかり白状しておしまい。
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お関の口元は自分の家を滅茶滅茶にして行った若者に対しての憤怒とお久美さんに対しての嫉妬でブルブルと震えて居た。
元よりお関だってお久美さんが只偶然恭の居る所へ来合わせて何の気なしに居たのだ位は分らないではなかったけれ共、若い者同志だ、何だか分ったもんじゃあないと云う気持と、恐怖と憎しみで乱されて居たお関は疑わずには居られなかった。
お久美さんの顔を見て何か云って泣かせてやらなければ気がすまなかった。
そしてお
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