いとは思ったけれ共、一度居ないと云われた者を執念く索すのも何だか厭なので※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は思い切れない様にして帰って来て仕舞った。
お関の顔には明かに昨日の話を不愉快に思って居るらしい毒々しい表情が有った。
それや此れやで※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は昨日持った疑問を益々はっきりさせられた様な気がして居た。
お久美さんの町へ行った事は嘘だったけれ共、木曜に集りの有るのは確かで有った。
山田の主人が半夢中で信じたキリスト教も、その年のおかげで、低いゴトゴト軋る様な声の祈祷や讚美歌が尊そうにさも分って居るらしいので、一年も立ったこの頃では月に一度二度ずつ祈祷会めいたものを開く様に成って、中学の生徒だの村の娘達だのが半分珍らしい物を見る様に、一度はまあ行って見ようやと云う調子で集まって来た。
けれ共中には熱心な者も有って、集りがあればどんな天気でもかかさず来て世話を焼く娘も有った。
山田の主人も、くつろいで涼める夜を片くるしい文句の講釈や口から出まかせの又聞き説法などには過したく無かったのは重々だったけれ共「先生、先
前へ
次へ
全167ページ中82ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング