りませんかねえ。
ほんとに可愛い子だった。
「そりゃあ彼の時分は可愛かったかもしれないけれど、此頃はどうだかしれないよ。
家が家だからね。
彼んな家に居てよくなれっこはないから用心しなけりゃあいけないよ。
好い食いものになって仕舞うよ、人をよくして居ると。お前の様な世間知らずはじきだまされて仕舞う。
「疑ったらきりはないから、好い加減にして置かなけりゃあ駄目でしょう。
そんな事思うと私はもういやになって仕舞う。
ほんとに。
[#ここで字下げ終わり]
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はその晩種々な厭な事ばっかり思い浮べて涙をこぼしながら長い事眠られないで居た。
九
翌日の午頃※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんに会いに山田へ出掛けて行ったけれ共、一番先に出て来たお関に、町へやって留守だと断わられた。
木曜に集りが有るから其の用事で行ったのだとほんとうらしい顔をしてお関は説明したけれ共、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は家に居ると云う事をはっきり感じて居た。
どうにかして会いた
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