物じゃあない、もっと得に成る友達を作るものだとか何とか云って※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に気を悪くさせて仕舞った。
[#ここから1字下げ]
「お前はほんとに変な人だよ。
十一二の時から風変りなんだものね。
高沢さんのお嬢さんが遊ぶから来い来いってお云いなさるのに行かないで、あんなお久美なんかと大騒ぎやって居るんだから。
何にしろあの方だって男爵のお嬢さんなんだからね、つき合って居ればいいのさ。
「まあ、あの事をまだ覚えて居らっしゃるの。
私もようく覚えて居るわ。あんまり腹が立ったから。
だってあの時分あのお嬢さんはまだやっと八つか九つ位だったのに私の事を顎で指し図して、
『之をおしなさい』『彼れをおしなさい』って小間使いの様に用を云いつけて切りたくもない人形の絵草紙だの何だのを切り抜かせられた時はほんとに腹が立った。
ちゃんとして行ったお客様だのにと思ってね。
あんな事をさせて喜んで見て居る親が随分馬鹿ですね。あんな事をして着物や人のお辞儀とお世辞のために生きて居る様な女に仕て仕舞うのだから。
それから見ればお久美さんの方がよかった筈じゃああ
前へ
次へ
全167ページ中80ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング