てもう仕て仕舞った事でどうも成りはしないのに。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は祖母に山田からの報告をしながら、今まで思って居た事を云おうか云うまいかを迷っていた。
云ったって好い様な事だけれ共、若しそれが事実だったらば、何の関係もないお久美さんにまで悪意を持たれる様になっては、そうでなくってさえよく云われて居ない家の娘と仲よくして居るのを不快に思って居る祖母はどんな事をするか知れないと云う不安があったので、其れがほんとだったら私が云わずとも自然に分って来る事なのだからと思って到々飲み込んで仕舞った。
けれ共そんなこんなで、昔から山田のために掛けられた種々な迷惑な事を思い出して来た祖母は、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が喫驚《びっくり》する位細々しい事まで話して聞かせて居たが、到々仕舞いにはお久美さんの事に落ちて行った。
[#ここから1字下げ]
「一体|彼《あ》のことお前はどうした事なのだえ、
私はほんとに不思議でしようがないよ。
[#ここで字下げ終わり]
などと、どうせよくは運が向いて来ない娘とそんな仲よく仕て居たって何にも成る
前へ
次へ
全167ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング