を利いてもらいたいって云う事も云って居るんですけれど。
「さあ、それはどうでしょうかね、
 私なんかには分りませんけれど、それ程にする事はありますまいと思いますよ。
 まあ弁護士と云えば公になり勝ちでございますもん、事を荒だてて見た所でさほどの功も有りませんでしょうよ。
 まあ勝手な事を申しますが、当分は家にお委せなすって居らしってようございましょう。
 どうにかなりましょうから。
「そうですね。
 そいじゃあ山田さんがお帰りなすったらよくお話しなすっといて下さいまし。
 御いそがしいでしょうが、どうぞよろしくお願い申しますってね。
[#ここで字下げ終わり]
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は帰る道々、どうしても、彼方からは金は返ったのだけれ共山田の家で消えて仕舞った様な気がしてたまらなかった。
 他の人に口を利かせるなとか、事を荒だてるには及ばないとか云うのは、只此方の為にばかりではない様な気もした。
 第一金に饑えて居る様な人にこんな事をたのむのは、此方からそうする様に仕向ける様なものだ。
 お祖母様もあんまり不用心すぎる。
 そうなってからああ斯う云ったっ
前へ 次へ
全167ページ中78ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング