て黙ってあげるけれど、こんなに延ばし延ばしして一度も顔も持って来ないのはひどいってね。
一体|彼方《あちら》は返すつもりで居るんでしょうか。
「そりゃ貴女、勿論拝借したものですもの、
お返し仕様とは思って居ましょうよ。
「そうでしょうかねえ、
そんならどうでも好い様な事だけれ共一度位云いわけに来そうなもんだけれ共……
何か上手《うま》い方法はないでしょうかねえ、
ほんとに困って仕舞う。
「そうですねえ。
兎に角あれ丈のお金なんですから。
でもまあ家で一生懸命物にする積りでやって居るのですし致しますから、あんまり外から口をお入れなさらない方がようございましょうよ。
[#ここで字下げ終わり]
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の心にはフッと或る事が浮んだ。
そして鋭く聞いた。
[#ここから1字下げ]
「何故?
「いいえ、何故って、
何故って事もありませんですけれどね。
あんまり彼方此方から云われると却って変に出てなかなか出さない人が有りますですから。
「そうかも知れませんね。
けれどあんまりはかどらないから丁度町に知った弁護士が居るから其の人に口
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