んな家の事の相談相手に成れるからこそお前だって来た甲斐が有るんじゃないか。
「相談相手にはなる事よ、いくらでも。
だって私貸し金の催促に行かせられるのは生れて始めてですもの、厭だろうじゃ有りませんか。
誰か外の人におしなさいよね、お祖母様。
「いいえ、お前が好いんだよ。
東京の家でもどうにか仕たいと云って居ますからと云って様子だけ見て呉れれば充分だから。
「お祖母様御自分で行らっしゃいましよ。
「いやだよ、私は。
後生の悪い業突婆見たいじゃないかい。
「そんなら私だって慾張り娘みたいでいやじゃあ有りませんか。
[#ここで字下げ終わり]
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は殊にお久美さんの事を思うと行き度く無くなった。
若し山田の家で使い込んででも居る様だったら、その事を聞くお久美さんだって辛いだろうし、自分だって、僅かばかりの金にせくせくして居ると見られるのはいやであった。
けれ共祖母が行って呉れ行って呉れと繰返し繰返したのむので、生れて始めての経験に胸をわくわくさせながら山田へ出かけて行った。
主屋の方へ行くと長火鉢の前に恐ろしい眼付をしたお関が中
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