に頼んだとか何とか云って面倒が持ちあがるから、仕様事なしにたのんで仕舞ったのさ。
「そりゃあ、そうかもしれないけれど、
 『そうですね。おたのみする様だったら又改めて私が上って種々お願い仕ましょう』
と云って置いた方がようございましたね。
 たのむ頼まないは此方の勝手なんだから彼の人が何と云おうが確かな人にした方がどれだけ安心でよかったか知れない。
「そりゃあお前はそう云うけれどね、
 きまり切った顔が殖えも減りもしない此の小さい村ではそんな事が大した事なんだからね。
 何でも私みたいに皆の世話に成らなけりゃあならない者は一人でも敵を作るのはよくないのだから。
「それもそうですね。
 それで何なの、お祖母様、どうなって居ましょうかってお聞きにでも成った事があって。
「あああるともね、この間中は日参して仕舞った。
 明日は町へ行きますから行らしって下さいって云うから行くと彼方の主人が居ませんからまた明日出なおして行きましょうと云ったりして、一日だってはっきりした事は分らないんだもの。私がいくら気長だって腹も立とうじゃあないか。
「一体どの位お貸しなすったの、そいで何をして居る家なの、彼方
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