4]子の気持を疑ったりして居た。
けれ共まあ当分の間の事だ、お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんが他家へでも行く様になれば総ては自分の都合通りになる等と云う事もお関の心の中には有った。
七
お関にはお久美さんの事も気になりながら、一方では自分の若い時の子の重三の事を種々近頃になって思い出して、丁度自分に子のないのを好い口実にしてどうにかして養子格にして家に入れたいと云う事を非常に願って居た。
けれ共もう二十年以上も会わないのだからどんな男になって居るか、何をして居るのかまるで分らなかったし、又それを山田の主人に切り出す折もなくて居た。
お関はY県に居る自分のたった一人の子の事を種々な不安と憧憬を以て折々考える様になって来て居た。
所へ恭吉が洗濯男として山田の家へ住み込んだと云う事は種々な点でお関の心に動揺を与えたのである。
町の呉服屋の世話で信州の生れだと云う彼の来たのは去年の春であった。
紺の股引きに破れ絆纏ばかりの小汚い者を見つけて居るお関の目には、麦藁帽子を軽く阿彌陀にかぶって白い上下そろったシャツと半ズボンでどこかしゃんと
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