素なおらしい体つきの子であったが、まだ十三四で、四肢も木の枝を続ぎ合わせた様に只長い許りで、肩などもゴツゴツ骨張った様な体の中は、お関はお久美さんに対して何にも殊[#「殊」に「(ママ)」の注記]った感じは持たなかった。
時にはほんとに可哀そうな気になって、
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「お前の様な者が好い身寄りを持たないのは不仕合わせだね。
私共の様な所じゃあ何も出来ないからね。
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などと云う事も有ったけれ共、一度一度と日の登る毎にメキメキと育って来たお久美さんがすべての輪廓にふくらみと輝やかしさを持って来ると、お関はその力の満ちた様な体を見る事だけでも、一種の押えられない嫉妬と圧迫を感じた。
出来る丈見っともなく仕て置かなければならない気持でお関はいやがるお久美さんを捕えて、「働き好い」と云う口実で彼《あ》の西洋人の寝間着の様なブカブカしたものを夏にさえなれば着させて置いた。
けれ共其れは何にもつまりはならなくて、若さはその白い着物の下にも重い洗濯物を持ちあげるたくましい腕にも躍って、野放しな高い笑声、こだわりのない四肢の活動は却ってその軽く寛やかな着物の
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