んで仕舞った。
二人は泣いても叫んでも仕様がないので、前の通り奉公をつづけ、哀れな母親は独りで僅か許りの畑と機物で口を過して居る様になった。
別にそう大して悲しがるでもないお関を見て主婦等は、
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「こちらを一生の家にさせて戴きますのですから。
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と云うお座なりをまんざらの偽とは聞き流さなかった。
山の彼方で母親ばっかりが淋しく暮してお関が十九に成った時急に思いも掛けず手紙だの人だのをよこしておしむ主婦の言葉に耳もかさない様にしてお関を連れ戻って仕舞った。
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「私ももう年も年でございますし、誰一人相談相手のありませんのは淋しくて堪りませんから御無理でしょうが。
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と母に云わせて実家へ帰ったお関は六七ヵ月すると大きな赤坊を産んだのであった。
お関はその子が男で有った事、重三と母親が付けたと云う事丈は知って居たが、碌に顔も見ずにすぐ近い村へ里子にやって仕舞った。
六
口を利く者が有って山田へ来たのはお関の二十の時であった。
当時もう四十二三に成って居た主人はお関が来ると
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