草好きな主婦の大切がって居る煙管をちょっと布団の下にかくしてみたり、ちょいちょいした小悪戯をして居た。
けれ共やっぱり子供の時からの癖で働く事もなかなかよく働くので主婦等はかなり目を掛けて、自分の煙管をかくされた等とは一向気付かず時には半衿だの小布れだのを特別にやったりして居た。
用が激しいので大抵の者は厭に仕て居ますと云う様な、そうでなくてもお関程面白そうに賑やかにしながら立ち廻って居る者のない中なので主婦は、
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「あれは年に仕ちゃあよく働くね。
きっと永く居る積りなんだろ。
こっちも重宝で好い。
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などと話す事もあったしお関も又ずーっと居て此処からどっか似合いの所へ身の振り方も極めてもらおうなどとさえ思って居た。
此の間にお駒は同じ町の或る士族へ小間使に入って居た。
年寄夫婦と大きな息子が三人居る丈の至極静かな家だったのでお駒の気質に合って、主人達からも可愛がられ自分も仕事だの手紙の書き様だのを教えてもらって満足した日を送って居るうちに喘息を持病に病んで居た父親が急に貧亡[#「亡」に「(ママ)」の注記]敗けをしてポックリと死
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