ので、
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「家のお関も手荒らですが働きますからこんな貧亡[#「亡」に「(ママ)」の注記]者には下されものですよ。
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と自慢さえして居た。
 そして何でも内場[#「場」に「(ママ)」の注記]に内場[#「場」に「(ママ)」の注記]にと振舞って体なども親に似げなく骨細に出来て居るお駒を却ってどうでも好い様に取り扱かって、祭りの着物なども、
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「姉ちゃんは働くからな。
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とお駒に去年のままをあてがって、お関にだけは新らしいのを作ってやったりするので益々図に乗ったお関は家中の殆ど主権者と云って好い位|自惚《うぬぼ》れて勝手気ままに振舞って居た。
 何にしろそう大して織物の出ると云うでもないY市のしかも小機屋であったお関の家が年中寒い風に吹かれて居たのは明かであった。
 朝から晩まで母親と父親と小さいお関までかかって、ギーッパタン、ギーッパタンやって居たところで入って来るもの等は実に軽少なので、片手間に畑を作ったりして居たけれど、段々娘になって来る二人を満足な装もさせられないので、十七の年お関は仲間の者の世
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