うから気の毒に思って呉れたら只それだけを受けて居れば好いんですよ、ねえ、お久美さん。
 なさけに餓えて居る様な素振りを一寸でも出してはいけませんよ、ほんとに。
 質の悪い者なら皆そんな所へ足掛けをつくるんだから。
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 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は此村の若者の中では何方《どちら》かと云うと目に立つ程調った容貌と言葉を持っている二十三四の恭吉の姿を思い浮べながら、単純な頭で其を見て種々に感じて居るお久美さんを不安に思い出して来た。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、
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「私をそんな馬鹿だと思ってるの。
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とお久美さんが云うまで幾度も幾度も繰返して「不仕合わせだと云って卑屈になってはいけない」とか「自分はちゃんとした位置の者だと思って居なければいけない」とか心配そうに云って居た。
 身動きもしない様にして二人は日影が傾むくまで草に埋まって話をして居た。

        五

 お関の嫉妬深い事は此の村でも有名であった。
 山田の主人に用談が有ってもお関を通じてでなくて
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