貴女が頼らずと好いじゃあ有りませんか。
それに恭のほんとの心は知れませんからね。
表面は好い様なおべんちゃらを並べて心じゃ何と思って居るか分りゃあしない。
又恭がそう真面目に思って居たって周囲の人は単純にそれ丈の事として見るものじゃあ有りません。
何にもしないで食べる人を一人世話する事はなかなかなんですからねえ、いくら田舎でもしっかり仕なきゃあだめですよ、ほんとに、お久美さん。
「ええ大丈夫よ。
何ぼ私だって、そんな嘘のような言葉を信じるもんですか。
「いいえ、そう今は云ってますけれどね。
人って妙なもので始終始終顔を見て居るとどんなに始めはいやだと思った人でも気にならなくなる様なもんだから、あんまり云われると、つい気がぐらついて来ないもんでも有りませんよ。
貴女みたいな暮しをして居る人は、しっかり自分と云うものを分らせて居なきゃあいけないわ。
どんなにお関にひどくされたって不仕合わせだって、ちゃんとしたお嬢様なんだもの。
雇人風情に情けをかけてもらいたい様な、又同情されたい様な様子を決して仕ちゃあいけませんよ。
しゃんと御主人らしくして居なけりゃあいけない。
向
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