居る自分は又他人から世話にならなければならない年で、物質の助力は勿論、精神的にだって、そのためにどうと云う程の力添えも与えられないで居る事がどれ程不甲斐なく恥かしく思われたか知れない。
 まだ経験のない一日一日と育つ盛りにあるかたまらない考えでお久美さんを動かして行くと云う事は、まるで性質も之からの行き方も違って居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子には不安の様でも不忠実の様でも有ったので、いつでもお久美さんの仕様と云い出した事を判断して居た。
 自分で自分が頼り無くて※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は青白い頬に涙を伝わらせた。けれ共お久美さんはじきに涙を止めて云い出した。
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「恭がね、
 そりゃあ私に親切にして呉れるのよ。
 あんまり伯母さんが甚いってね。
 そいでこないだも一寸云ったんだけれ共、
 自分の家が信州に在って去年父親が亡くなって一人ぼっちで居る阿母さんが淋しがって、帰って来い来いて云って来るんですって。
 だから自分は近々に帰るつもりで居るからお久美さんも一緒に行らっしゃいって云うの。
 自分こそこんなにし
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