になって云った。
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「ええそりゃあそうでしょうって。
そりゃあ私にだってよく分って居る事よ。
どうかして好い事は無いかと思っては居るんですけれどね、何にしろ私は今何の働きもない寄生虫なんですからね、思う様に事の運べないのはあたり前でしょう。
貴女の苦しい事も辛い事もよく分って心配しながらどうも出来ないで居るんだから私だってそりゃあ辛い。
だからね、貴女も私もどうしてもそう外仕様がない時にはそこで出来るだけの事をして居る方がいいじゃあないの。
今の私で出来るだけの事を私は貴女にしてあげる。
「ええほんとにそうね。
私だって貴女がいつでも云っておよこしなさるからそうは思っても此れから先の事を考えるともう何にもするのがいやに成って仕舞うのよ。
私が一生懸命して居ても報って来るものったらいつだって同じ大きな声で怒鳴られる事なんですもの。
仕栄がないのもあたり前じゃあないの。
「そりゃあそうでしょうねえ、ほんとに。
だけれ共一生貴女は彼んな人の傍について居ずとも好いんだからこれから先の事を好く思って居る外ないでしょう。
皆な人間はそれで生きて居られるんで
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