好いとは思いやしないけれどね。
今よりは増しだと思うわ。
一年ましに伯母さんはひどくなって来るし、
どこにどうして居たって私はつまり不仕合せな人間なんだから。
「じゃあ何の尼さんになるの。
「何のってなあに。
「まあ、貴女の所じゃあ此頃キリスト教を信じて居るんでしょう。
だから仏様の尼さんかキリスト教の尼さんかってきくんです。
貴女成るんならどっちになるの。
「あら厭だ、私、
あんなキリスト教の尼さんになんか成りたくもないわ。袋みたいな黒い着物を着てる人でしょう。
衣を着た仏様の尼さんの方が余程好いわ。
私なるんなら仏様の尼さんだわ。
「貴女仏様って何だか知って居て?
[#ここで字下げ終わり]
年若い女に有り勝の何の根拠もない様に軽々と死にたいとか尼さんになりたいとか云う通りにお久美さんまで他人の話をする様な口調で「私成るんなら仏様の尼さんだわ」等と云って居るのを聞くと※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はフト不愉快な気持になった。
此の出し抜けの問いは余程お久美さんをまごつかせた。
気を計り知れない様に※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−9
前へ
次へ
全167ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング