さかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子を半々に見て居たお久美さんはいきなり「ああそうそう、私どうしても貴女に伺おうと思って居た事が有る」と云い出した。
[#ここから1字下げ]
「あのね、先月の始頃私の所へ手紙を下すった事があって。
「先月の始め頃?
どうして、私はっきり今覚えてないけれど。
どうかしたの。
「いいえね、
伯母さんがどうも手紙をかくすらしいのよ、
大概のはね、受取ったものが私ん所へ持って来て呉れるけれど、誰も居ない時来たのは皆どうかなってしまうんじゃあ有るまいかと思う。
何故ってこないだ貴女の行らっしゃった二三日前にね、何心なく伯母さんの針箱の引出しを明けたら何だか書いたものが小さく成って入ってるんでしょう。
悪いと思ったけれどそうと出して見ると貴女のお手紙なのよ。
私もうほんとにびっくりしちゃったわ。
だってね、捨てる積りだったと見えて幾つにも幾つにも千切って順も何もなく重ねてあったんで、どんな事が書いて有るんだか分らなかったのよ。
よっぽど出して知らん顔をして居ようかと思ったけれど、何だか怖いからそのまんまに仕て置いたけれど。
貴女覚えて居ら
前へ
次へ
全167ページ中40ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング