て、さっき※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が居た所に又並んで座った。
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「今日は随分暑いわねえ。
 こんなじゃあ八月になるのが思いだわ。
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 お久美さんは頬を火照らして平手で押えたり袂の先で風を送ったりして居た。
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「そうでもありませんよ。
 風がよく通るんですもの。
 そんなじゃ東京へでも出て一夏送ったら暑い暑いで死んで仕舞いますよ。
「そう云えばそうだけれど……
 そんな事云ったって貴女だって矢っ張り、暑うござんすね暑うござんすね、まるで体中燃えてきそうだっておっしゃるじゃあ有りませんか。
 駄目よ、誰だって暑いんだもの。
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 二人の間には罪の無い笑い話が取り交わされた。
 祖母の家へ来てから余り吐き出されないで居た持前の「おどけ」が後から後からと流れ出して、体も心も彼の青い空と水の中に溶け込んで仕舞った様になった※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、思う事も云う事もないと云う風にお久美さんを見ては満足の笑を浮べて居た。
 頭をかしげて池と※[#「く
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