の姿が※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の目に入るまでには大変に長い時間が立った。
 恐ろしく長い間待って居たと※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は感じて居るのであった。
 心持上半身をうつむけて暑い中をせっせと歩いて来るお久美さんの紺色の姿が※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の目に入ると、彼女は弾かれた様に立ち上って、微笑のあふれる顔を真直にお久美さんを見ながら半ば馳ける様に出迎に行った。
 両方から急いで二人はお互に思ったより早く堤の終る所で会う事が出来た。
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「まあよく来られた事。
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 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は手をお久美さんへ延しながら安心して震える様な声で云った。
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「沢山お待ちなさって。
 伯母さんの出掛け様が遅かった上に今まで役場の人が来て居たんで……
「そう、
 大丈夫よ、幾らも待ちなんかしない事よ。
 私だって今一寸前に来たんだから。
「そう、そんなら好いけれ共。
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 二人はゆるゆると歩い
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