噺を※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は息も吐かない様に話して聞かせたりした。
 今でも※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は何かの折に葡萄などを見ると、其の時の二人の幼ない様子と、あの甘く舌に溶ける様だった実の事を思い出す事が有る程、嬉しい、まあよかったと思った会合であった。
 其の次の日っから二人は一日の大抵は一緒に伴立って前の小川に魚を取りに行ったり、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の部屋で沢山ためて持って居たカードだのお伽噺の安本などを見て遊んで居た。
 乗気になって明けても暮れてもお久美さんが居なけりゃあ生きてる甲斐が無いと思い込んで居た※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、自分が桃色のリボンで鉢巻の様にはでな頭飾りをして居るのに比べて大切なお久美さんの頭はあんまり飾りないので、持ちふるしたのですまないと思いながら、うす紫に草花の模様のあるのをあげて、貴方も私みたいな髪におしなさいおしなさいと云ってもどうしても聞かなかったお久美さんは其れを桃割の髷前に頭からダラリと下る様に掛けて居た事なども有った
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