電燈の光りがランプの火の様な色でどんよりとともって居る。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は半年振りで見る山田の家の中を珍らしい様な気になりながらのぞいた。
茶色になって虫の食った箪笥の上には小鏡台だの小箱だのがごたごたと乗って、淋しい音をたてて居る六角時計の下に摺鉢に入れた蚊いぶしの杉の青葉がフスフスとえむい煙を這わせて居る中に五つ六つの顔がポツリポツリと見えて居る。
東北の人特有な鼻のつまった様な声が活気のない調子でやりとりされて居るのを見ると、寺の様に高い天井と黒く汚れた壁だの建具だの外《ほか》無い部屋の中がまるでお化けが出そうに陰気に感じられた。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の目の前には割合に気持の好い自分の家の食堂だの書斎だのの色が一寸閃いて消えた。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子には掛り合わずにさっさと皆の中に入って行った祖母は急に※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子を見失ったのを驚いた様に、
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「おや、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24
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