て来て、
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「さあお前好いかい、
すっかりよく熟したのを取っておあげ。
お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]ちゃん、私は一寸用があるから此の子と音無しく遊んで居らっしゃい。
お久美って云う名ですからね。
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と、その娘の肩を※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の方へ押す様にして引き合わせるとさっさと主屋の方へ行って仕舞った。
少し極りの悪かった二人は顔を見合わせては罪の無い微笑を交して居たが、
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「取りましょうね、甘い事よ。
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とお久美さんが先に立って歩き出した。
行く先々には踏台がお伴をしなければならなかった。斯うして二人はじきにすっかり仲よしになって仕舞った。
一体※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は田舎の子は大嫌いだった。
無作法に後について来たり※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の知らない方言で悪口を云ったりするのもいやだったけれ共、傍によるとプーンとする土くささと塵くささが尚きらいであった。一番始め
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