水準1−91−24]子は両親が有って而も大切がられて、かなり暖かな気持に包まれて居てさえ此れ程感動するのに、不幸が離れる事のない哀れな暮しをさせられて来たお久美さんは自分の倍も倍もどうか有りそうなものだのに「若しかしたらそれを感じない程に荒んだ気持になって居るのでは有るまいか」と云う歎かわしい疑が一寸※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の頭に閃いたがそんな事は瞬きをする間に消えて仕舞って※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は純な涙を瞼に一杯ためて、尊い話でも聞く様にお久美さんが甘えた口調でゆるゆると話し出すのを聞いて居た。
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「伯母さんが何か彼にか云っていやだからあさってのお昼っから池の所で話をしない事?
 丁度いい塩梅にS村の叔父さんの所へ行くんですって。
「まあそう、そんなら行きましょう。
 ゆうべは私もう腹がたって腹がたって居たたまれない様だった。
 貴女幾時頃まであんな所に行かせられて居たの。
 帰りしなによって行こうかと思ったらあのいやな人ったらわざわざ土間に下りて見てるんですもの駄目だったのよ。
「何でもよっぽどおそ
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