喜びが渦巻き立って、自分の力が強められた様な誇らしい心持に移って行った。
 それ等の心の遷り変りは実に実に速くて、目にも止まらぬ程のものでは有ったけれ共、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の心は非常に過敏に、明るくなったり暗くなったりして動かされた。
「私のお久美さんだ」と云う満足が押えても押えても到底制しきれない力で延びて行くと、病的な愛情が※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の胸を荒れ廻って、「若し万一此の人に自分でない者が斯うして居たら」と云う途徹も無い想像の嫉妬までおぼろに起って来までした。
 けれ共やがて、それ等の過激な感情が少しずつなりとも鎮まって来ると、純な愛情に溶かされた様な、おだやかな、しとやかな、何者かに感謝しずには居られない嬉しさに※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は我を忘れて居た。
 お久美さんは大変静まった様子をして居た。
 手を預けた儘打ち任せた寛やかな面差しで居るのを見て※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は何となし驚ろかされた様な気持になった。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3
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