中はどうしても他家へ入る方が好いと云って居たじゃあないの。
「ええ。
「この頃に又変ったの。
「そうじゃあないわ。
「じゃあ、どうしたの。
私ちっとも分らないわ。
まあでもね、貴女の気の進まないのを無理にと云うのじゃあないからどうでも介いやしないけれど。
そいでこれからもずーっと彼の家に居る事にきめたの。
「ええ。
「そいじゃあ何にも此那に騒ぐ事もなかったわね、
貴女の一番好い様にした方が好いんだから、そんならそれが一番好い事よ。
でも、まあ少し考えて、あの人にも相談して御覧なさいね。
どうせ、いけないって云うだろうけれど、
…………
貴女今日少し変ね、どうしたの、
躰が悪いの、ちっとも勢がない、
顔だって妙にうるんで居る――
「そう、何でもないわ、
気の故でしょう。
[#ここで字下げ終わり]
お久美さんは懈るそうに左手をあげて顔中をぶっきら棒に撫で廻した。
いつもになくたるんだ体中の筋肉、力の弱った様な眼の輝きを見ると、この頃の事で受けたお久美さんの苦痛が皆裏書きされて居る様に思えて気の毒で気の毒でたまらなかった。
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「ほんとに体を大切
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